Animals of the North


現在、レコーディングを重ねながら次回の作品となる音楽を試行錯誤の構築中、やっとだいたいの姿形が見えてきて、制作方法も固まってきました。ここまで来るのに、のりしろ部分含めて6年はかかっているな…千里の道も一歩から、完成までにどれくらいの時間がかかるかあらかじめ知ってたらやりたくなくなるってものですね。まあ普通はこんなに時間をかけるヒマな人はあまりいないと思います…いやいるかな?私はとんでもなくノロノロ作っているだけなのです。誰にも急かされないばかりか、むしろ「ゆっくり作りたまえ」と言われる事しかないので、さらに遅さに磨きがかかります。娘も小さい事だし。

遅い事にはそれなりにいい事もあるのですが、今は早く完成させたい!…というのは、心が少しずつさらに次の作品のテーマに向かっているからです。この、心に未来を感じる次なるテーマが浮かんだ時こそが、一番楽しい。

テーマについて。それは、かなり雑な言い方をすると「動物の移動」です。わくわくするでしょう(しない?)。特にカリブーの移動に惹かれていて、これはもうずばり星野道夫さんの影響です。音楽家としてこのテーマをどう形にするか、考えるだけでもゾクゾクします。(しない?)…とはいえ目ぼしい手がかりはありません。ひとまず極北の動物に関する本を読んだり、そういう記事を集めたりしています。

「低く唸るようなカリブーの鳴き声が聞こえてきた。
カチカチカチカチと奇妙な足音も近づいてきた。
それはカリブーの足首の腱の鳴る音だった。
私たちは河原に伏せながら、そのかすかな音に耳をすませていた。
不思議な足音はどんどんと迫り、
カリブーは一列となって私たちのすぐ隣を通り過ぎていった。
自然の気配を何一つ乱さなかった快感があった。
私たちの姿だけが消え、
人間のいない世界に流れる秘かな自然のリズムを垣間見たような気がしていた」

星野道夫

この文章に全てが詰まっています。やっぱりもう、音楽にする必要ないや。

そういうわけで、今現在制作中の作品も、今年中か来年半ばまでには手を離れるかなと思っています。そう、私の中の「早い」は1年後なのです。

beginning of the next


先日、次回の作品へ向けてのレコーディングを開始しました。

出産後1年2年は音楽のことを考える余裕もありませんでした(シンセ類やAbleton Liveの操作方法もすっかり忘れていたほどです)が、ここ1年はしぶといというかなんというか、出産直前に温めていたアイディアが消えることなく再び浮かび上がり、しかも程よく熟成されていて形に出来そうな兆しが見えてきたので、少しずつ下書きを溜め込んでいました。

今回はサックスの音、それに感じる質感やイメージを軸に声やピアノやその他の音色を使って作品を作ろうと思い、以前リリース後のライブで何度もご一緒させて頂いたサックス奏者の中村哲さんと新井一徳さんの音を素材として録ることから始めました。最終地点までどのようにいくか、その過程は手探りです。

Jeff Millsは、より多くの作品を早く作るためには「システム」が重要だと言っていました。その言葉に、素直にショック!自分に足りないものが何なのかといえばシステムそのものではないかと初めて気づき、もう多作に憧れるのは止めようと思いました。諦めは良い方です。私の音楽作りの過程はシステムも雛形もなく、想像だけを頼りにゼロから始めているので、毎回途方もない時間がかかります。本当にそれが嫌で嫌で・・・(笑)今回の録音過程で、少しでも自分のシステムが出来上がればと思います。

また、今回は発表する際に音楽の域だけではなく他分野の方と協力出来たらと考えています。こちらの方はまだ歩みだしてはいませんが、音がもっと形作られて来たら始めて行くつもりです。

それにしても、先日録音したサックスの音は私にとっては膨大な情報量!!これをどうするのだ。いくつか方法は考えていますが、、まあ誰にも急かされていないので、慌てずにやります。次回のレコーディング、年内に出来るかな・・・。

lunuganga


今最も惹かれる場所、今すぐ行きたいところはと聞かれたら迷わずスリランカ、と答える。(以前はアラスカと答えていた。もちろん、アラスカは今でも行きたい。)もっと言えば、熱帯建築家ジェフリー・バワのホテルへ行きたい。そもそもは、BSか何かでジェフリー・バワの建築を柴咲コウが訪れるという短い番組を見て、そのインド洋を臨む「ジェットウィング・ライトハウスホテル」の激しさに度肝を抜かれてしまったのがきっかけだ。


こちらがそのホテルの代表的な景色なのだが、番組の中ではちょうどこの場所の収録の時に天気が悪かったようで、物凄く海が荒れていた。風が吹き荒れ、空は灰色で、海も灰色。でもそれが感動的なまでにエネルギーを放っていて、ホテルの洗練された空間との対比が最高に格好良かった。しかしどの本を見ても、この場所は上のように青い海をバックにした写真しか探すことができない。いずれここに行く時は、ぜひ海に荒れていてほしい。

一番上の写真は、「ルヌガンガ」というバワが作った理想郷。バワの邸宅でもあり、泊まることも可能。特にバワ建築に泊まる事に欲望はないが(むしろ、自分のスーツケースをあの素敵な空間に広げたいとは思わない)自然を「取り込む」と言うより、そこに巨大な岩があったらそのままにして周りに廊下を作ってしまうような豪快さを体感してみたいと思う。

結局、岩や樹木や空、海の美しさ、強さに対抗しうるものはないのでは、と思う。どのような建築も。それらをどう縁取るのか、どう動くのか、そしてそれらから身を守る小さな空間をどう造作するのか、という事なのでは。そういう考えを巡らせる事は、音楽を構成する上でとても重要だと思う。

それよりなにより、「ルヌガンガ」という響き、美しい。湿気と静寂を帯びたこの言葉の音楽を作りたい。

Caribou


星野道夫氏の写真集を見ていた時、カリブーの親子の写真が目に止まった。様々な色と生命に溢れきっている大地にすわり込み、遠くの何かを見ている写真だった。人が住む世界とはかけ離れている大自然の中、カリブーはそれを美しいとも素晴らしいとも思うこと無く、ただ息づいている。誰がこのカリブーの名前を知っているのだろう。他のカリブーが?この写真が撮られたあと、この母カリブーは子供とともにどこへ去っていき、今は生きているのだろうか。きっと生きてはいないだろう。

ふと、「このカリブーは私だ。」と思った。このカリブーの様に生きていたい、と言う事に近いのだと思うけれど、少し違う。憧れるような気持ちでは無いようだ。この、目も眩む様な大自然の中で、生命として在り、消えていく名も無き生き物と私の間に、何の違いがあるだろうと思ったのだ。特に哲学的に考え込んでいる最中ではなく、娘がバギーの上で寝てしまったために時間が出来たので、図書館に立ち寄ってパラパラと写真集を見ていた時にふと感じた事だ。

このカリブーと同じだ、と思うことはとても自分を安心させる。とても心地が良い。 誰の目に止まっても止まらなくてもいいのだ、名前さえ無くてもいいのだ、でも意志を持ってやってきて、やがて去っていく。

岡潔氏の、「春のスミレはただスミレらしく咲いているだけでいいと思っている。咲くことがどんなによいことであろうとなかろうと、それはスミレのあずかり知らないことだ。」と言う言葉がわかった気がした。 

berlin 2015

2015年も残すところ数日。しかし今年は今までに増して年を越す事に対しての感慨がない。私にとって新年とは、冬至を過ぎた頃に始まるという感覚がある。その日を境に徐々に日が伸び夏至に向かっていく感じは、実にパワフルでとても好きだ。まだまだ冬真っ盛りではあるのだけれど、確実に夏に向かっている、未来に向かう感じがする。

今年一番の出来事は間違いなく、娘とドイツを訪れ、マニュエル・ゲッチング氏のお宅にてワインと会話を楽しんだ事。そしてダルムシュタットで行われた友人の結婚パーティーに行った事。これにつきる。

2歳3ヶ月の娘との海外遠征はもちろん不安ではあったけれど、予想をはるかに超えて楽しい旅だった。まるで我が街を行くようにベルリンの街をずんずんと歩いて行く娘の頼もしい事。彼女にとっては、ベルリンだろうが東京だろうがそう変わらないはず。むしろ、私の心の高揚に反応していたのかもしれない。とにかく娘は楽しそうだった。 
 
 

マニュエルとの再会。この日の夜にルッツ・ウルブリッヒとのリハーサルがあり、数日後にはオランダでの公演を控えていた忙しい最中に自宅に招いてくださった。近々引っ越すので散らかっていてごめんねと言っていたけれど、そんなのは気にならないほどドカンと大きいアルトバウ(古いアパート。築100年近いのでは?)。白黒映画で見るようなふるーーーいエレベーターで5階へ。玄関入るとすぐに大きいソファ。本と書類が天井まであふれていると言う感じで雑然としているのだけれど、そこで音楽を演奏し、考え、生活している、根のおりた落ち着きが心地よかった。あと2つアパートの部屋を持っているそうなので、おそらくここはコンピューターベースのスタジオなのだと思う。写真を見れば分かる様に、とてもシンプルなシステムでやっているんだよと言っていた。奥さまで映画監督のイローナと3人でテーブルを囲み、少しの、夢の様な時間を過ごした。


娘は、ベルリンがお気に入りの様だ。知った道を行くがごとく、私の先をどんどん歩いていった。


ウエストサイドギャラリーは、4年前来た時に比べて落書きが深刻な状態だった。写真の彼らは、黙々と落書きを消す作業をしていた。


ベルリン。ベルリンの事を思うと、創意や挑戦の空気で胸がいっぱいになる。今すぐにでもまた行きたい。

娘とはどこにでも行きたい所に行こうと思う。彼女の為になるとか、情操教育とか、そういう気持ちは全くなく、むしろ私のワガママにすまないが付いてきてくれと言う感じ。彼女はまだ小さいから私についてくるしかないのだ。来年もまたどこかに行こうと思う。

Night of the Vision

 photo MINGUSS.jpg
MINGUSS 3rd original album

"Night of the Vision"
♪♪

produced by
HIROSHI WATANABE a.k.a Kaito


"The music is as beautiful and elegant as the originator herself!"
—— Manuel Göttsching


OTHER COMMENT



1.Night of the Vision
2.Highway Mood
3.Ultramarine Sphere
4.Horizontale
5.shower room
6.ready to future
7.Mfuwe
8.cocotte


2011 IZIDOA disc

2100 jp yen(tax in)





Minguss sings for fun with other Artist

ABOUT

   Minguss is Minguss.

MINGUSSは小西麻美(mami konishi)によるソロプロジェクト。1982年7月19日東京生まれ。幼少期よりクラシックピアノを学び音楽大学ピアノ科を卒業。在学中よりジャズをはじめクラシック以外の音楽に夢中になる。卒業間近にアメリカへ短期間のジャズプログラムを受けに行った後、2005年9月にミンガスを結成。2006年に1stアルバム『プリミンガス』をリリース。この頃からマイルス・デイビスの音楽に特に心酔し始め、音楽に対する感性が変わる。2008年に『スーパーソニックサウンド』をリリース。その後からデトロイト・テクノに引き寄せられクラブ・ミュージックに傾倒。世界中で活躍し、独特の繊細で美しい音楽を生み出し続けるHIROSHI WATANABE a.k.a. KAITO氏プロデュースで、3rdアルバム"night of the vision"を自身のレーベルIZIDOAより2011年10月12日に発表。このアルバムには、ジャーマン・ロックの巨匠マニュエル・ゲッチングからもコメントを寄せられる。2017年現在、サックス奏者の中村哲、新井一徳両氏を迎え次回作を制作中。

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