2015/11/18

No Journey's End

 

数年前、DJ/プロデューサーの白石隆之さんから紹介されて知ったMichael O'sheaの音楽には、最初の一音を聞いてもうぞっこん惚れ込んでしまった。もちろん今も私のヒーローだ。それはあらゆる意味でなのだけれど・・・。

しかし惚れ込んだはいいが、情報が少ない。呼び方もマイケルは良いとして、オシェアなのだかオシェイなのだか、それすらわからない。どうやらこの1枚のアルバムしかリリースされていないようだ。

その後、彼の音色に触発されて中東の音楽への興味をどんどん掘り下げて行った。図書館である中東音楽に関しての本を手にした時、偶然にもmichael o'sheaの事が半ページほど書かれていた。その本の題名は完全に忘れてしまったけれど、マイケルが「アイルランド生まれ」で「警察官の息子」だったこと、そして大学だか高校だかを中退して、自作の楽器を使いストリートミュージシャンをしていたことなどが書かれていた。

自作の楽器!そしてこのアラブな音色にそぐわない、ビシッと決まったスーツ姿。1枚しかリリースされていないアルバム。なによりも、ストリートミュージシャンであること。その全ての点に私は孤高の音楽家像を重ね、心底、惚れ直したのである。

未だにこのアルバムを手にできていないが、画像検索をするとアルバムに書かれているライナーノーツのようなものを見ることが出来る。そしてそこに書かれていることは、本に書かれていた内容そのままだったのだ。やはりこのライナーノーツしか情報源がないのだな・・・それはまあ良いとして、このマイケル、かなりの変わり者。何がって、、その職業経験の幅広さ。ざっと意味のわかる範囲で、彫刻家・デザイナー・俳優・ソーシャルワーカー・工場労働者・セールスマン・発明家・皮職人・浮浪者・ヒッピー・旅人・音楽家・楽器製作・・・などなど。あとはよく分からないものもある。しかしマイケル自身は、この事に関して特に知ってほしいとも思っていないようだ。

マイケルが演奏している楽器は、彼自作のもので、少なくとも3つの楽器の組み合わせでできている”Mo Cara"というものだそうだ。ダルシマー、そしてアルジェリアの音楽家の使用していたZelochord(これが何の事なのか謎。)、Black Hole Space Echo Boxという自作の楽器、そしてアンプを搭載。詳しく書かれているわりに楽器の全貌が依然謎なのだけれど、マイケルは自分が旅する事を助けてくれた沢山の人々もこの楽器に満足している事を、嬉しく思っているようだ。「世界を旅して周り、人々に出会う事によって生まれた楽器」にふさわしい、混沌とした平和な楽器だ。

Mo Caraは、彼自身が本当に求めいていた音を出すものなのだと思う。どういう経緯でこのアルバムが録音されたのかはよく分からないけれど、彼の音楽は本当に音色が素晴らしく、それを永遠に聞いていたいと思うほど完全なものだ。

多彩な音色を選び組み合わせ、リズムやハーモニーを構築していく方法に対して、一つの音色だけで世界を作ってしまう方法、どちらが上でも下でもないが、私自身は後者に憧れる。遊牧民の素朴な歌のようで。雨の音をずっと聞いていたい、日が沈むのをずっと眺めていたい、そういうものと同じ音なのだ。

※michael o'sheaについてはこちらにさらに詳しいバイオグラフィを発見
※一部訳し間違えていたので、多少書き直しました